お母さん・・・ |
創作の怖い話 File.272 |
投稿者 りす男 様 |
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A太は泣きながらマンションの9階の廊下の手すりから身をのりだしていた。 A太は6歳小学1年生。生まれつき体が小さく、 入学した直後からクラスメートに「チビ、チビ、お前なんか死んじまえ!」 といわれいじめられていた。 母親は、一流企業に勤めるキャリアウーマン。 教育熱心で、A太がいじめられて泣きながら帰ってきても、 「いじめられたくらいで泣くんじゃない。男の子はないちゃだめなの。 泣くぐらいなら、いじめ返してやりなさい。」といって、A太を家から追い出したのであった。 いじめは日に日にエスカレート。クラスメートは「お前何か死んじまえ。チビは死んでも悲しまれないぜ!」 などという心ない言葉をA太にかぶせた。 A太は、お母さんに訴えてもどうせたすけてもらえない、 こんな辛い思いをするくらいなら死んだ方がましだと考えた。 A太は、いじめられた悔しさを思いだしながら勇気を振り絞って飛び降りた。 恐くて目を瞑っていたA太は、 ものすごいスピードで落ちて行く中あまりの恐さに気を失いそうになりそうになりながら、 「やっぱりまだ死にたくない!!」と考えた。 しかし、その時にはすでに遅く高級マンションの玄関の屋根に凄い音をたてて落ちた。 しばらく、時間が経っただろうかA太は奇跡的にも意識があった。それどころか痛みすら感じない。 しかし、床に血が大量にながれていた。流れた血を見ながらも、まだ死にたくないと思ったA太は言った。 「お母さん助けて!」 するとA太はいつの間にかマンションの自分の部屋のリビングの椅子に座っていた。わけがわからない。 ただ、机の上には小学校の遠足の時のクラス写真。 A太をいじめていた生徒の顔に優太の血らしきものがついていた。 「ガチャ」 誰かが帰ってきた。 「ただいまぁ〜」 父の声だった。 「お帰りなさい」自分はまだ生きていたのか。全ては夢だったのだ。そう実感した。 しかし、父親はA太の顔を見るやいなや、カバンもスーツも投げだし、 悲鳴にも似た大声を出しながらにげていった。 「お父さん・・・?」 A太には何がなにかわからない。 ぼーっとたちつくしているとまた意識が遠のいた。 次に気づくとまた、A太はリビングの椅子に座っていた。 「ガチャ」 「ただいまぁ」 お母さんの声だった。 「お母さんおかえりなさい。」 しかし、またしても母は、出迎えに来たA太の顔を見ると、恐怖に怯え、「キャー!!」と叫びながら逃げ出した。 A太は、涙を流した。 「何でみんな僕を避けるの?みんな僕のことが嫌いなの?お父さんもお母さんもなんで逃げるの? 僕はお母さんもお父さんも大好きなのに・・・。 僕が黙って手すりを乗り越えたから?何で?なんで?ナンデ?」 そう思い、横にかけてある廊下の鏡に映った自分の姿を見ると全ての意味がわかった。 まだ6歳であるA太の身体は全身が血まみれで、頭が割れ、 目玉が飛び出していて、とても元の身体の原型を留めていなかったのである。 「お母さんタスケテ・・・。」 ★→この怖い話を評価する |
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