しあわせ

創作の怖い話 File.2



投稿者 13ri@75 様





大学に入るために上京して、その日にあなたに出会ったことから私のしあわせは始まった。

道に迷っている私を大学の中まで連れて行ってくれた。ついでにサークル活動まで紹介してくれた。

あなたはそのサークルの先輩だった。知ったときには笑ったわ。

先に就職したあなたが一ヶ月とはいえ海外出張をしたときには、とても寂しかった。

真っ黒になって帰ってきたあなたは、

そんな私の気持ちを知ってもいつもと同じように接してくれたことがうれしかった。

ホワイトデーのお返しには、

お菓子問屋から段ボール箱ごとのマシュマロを宅急便で送ってきて私を驚かした。

映画を見たり、食事に行ったりと一緒に居た時間が長くなるにつれて、

私はどんどんとあなたにひかれていく。

一番ビックリしたのは、あなたが初めての手作りケーキをプレゼントしてくれたこと。

でも、一口食べて「美味しい」っていうと、もっと食べてという。

もう一口食べたらケーキの中に指輪が入っていた。

うれしかったけど、その後に歯医者に行ったことは内緒にしているわ。

そんな、あなたと居た楽しい時間を次々と思い出していく。

走馬燈のように。

そう、今の私は病院のベットで横になっている。

隣にあなたが居ることは分かっているけど、もう話も出来なければ見ることも出来ない。

あなたの声も聞こえない。

だって、心臓も呼吸も止まってしまっているから。

あなたと一緒でとてもしあわせだった。

このままずっとしあわせのままで居たい。

私は今、死んでしまったけどしあわせのままで居たい。

そう、あなたと“しあわせ”で居たい。

あなたと“し・あ・わ・せ”で・・・・

“死合わせ”

朝、ベットの脇で彼が死んでいるのを看護師が発見した。




★→この怖い話を評価する

遠くまで光る懐中電灯


[怖い話]


[創作の怖い話]

[PR]消防士ヘッドライト